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【会長声明】最低賃金の大幅な引上げと全国一律化を求める会長声明

 昨年、鳥取地方最低賃金審議会の審議に基づいて、2021年(令和3年)10月6日施行の鳥取県の地域別最低賃金は、時給821円と決定されました。前年から29円の上昇となっています。しかし、時給821円という水準では、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約14万2000円、年収約170万円程度にしかなりません。この賃金額では、労働者やその家族が十分に生活できるだけの収入水準が確保されているとは言い難いと考えます。
 2021年の最低賃金は、最も高い東京都が時給1041円に対し、高知県、沖縄県の820円が最も低く、221円もの開きがありました。最低賃金法9条2項は、地域における①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払能力を地域別最低賃金の決定の際の考慮要素としますが、このような著しい地域格差は、これらの考慮要素に照らしても正当化できません。労働組合や研究者による調査によれば、都市部と地方の間で、労働者の生計費にほとんど差がないことが明らかになっています。また、労働者の賃金や企業の支払能力の差異は、賃金構造基本統計調査等のデータによれば、「地域」による差異よりも企業規模や産業、職種による差異の方が大きいと言えます。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、韓国等では、既に全国一律最低賃金制度が実施されています。そこで、将来的には、日本でも、全国一律最低賃金制度が実施されるべきですが、まずは、最低賃金の低い地方において、最低賃金の大幅な引き上げが図られる必要があります。
 新型コロナウイルス感染の拡大による企業経営の悪化を考慮し、最低賃金の引上げは抑制すべきとの意見もあります。しかし、最低賃金付近の低賃金労働を強いられている多くの労働者は、もともと日々生活するだけで精一杯で、緊急事態に対応するための十分な貯蓄ができていません。特に近時はウクライナ情勢の影響により今年4月の消費者物価指数が前年同月比2.5%増となるなど物価上昇により生計費が増大しており、労働により十分に生計を立てられるように最低賃金を引き上げる必要性が増しています。
 一方、最低賃金の引上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対して、政府は、新型コロナウイルス感染拡大に対応した支援策の拡充だけではなく、長期的継続的な支援策を強化すべきです。具体的には、最低賃金の引上げが困難な中小企業のために、社会保険料の減免や減税、補助金支給等の中小企業支援策を実施する検討を進めるべきです。
 上記を踏まえ、当弁護会は、鳥取地方最低賃金審議会に対し、鳥取県の地域別最低賃金の大幅な引上げの答申を出すことを求めます。また、厚生労働省に対して、全国一律最低賃金制度の導入を検討するように求めます。

以上

2022(令和4)年7月1日
鳥取県弁護士会
会長 西 川 文 雄

 

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