特定秘密の保護に関する法律(以下、「特定秘密保護法」と言います。)は、特定秘密指定の対象が広範かつ不明確であり、国民の知る権利、報道・取材の自由に重大な脅威を与え、国民主権を形骸化させるおそれのあるものです。当会は、過去、幾度か法案に反対し、法律の成立に抗議し、さらに施行に対して廃止を求める会長声明を発してきました。当会の基本的立場は依然として特定秘密保護法の廃止を強く求めるものです。
ところで、昨今、学校法人加計学園の獣医学部新設問題に関する文部科学省の文書の存在をめぐる問題や、学校法人森友学園への国有地取引に関する財務省の決裁文書改ざん問題、そして、陸上自衛隊のイラク派遣時の日報の存在をめぐる問題など、行政文書の管理のあり方をめぐる問題が後を絶ちません。
こうした社会背景もあり、平成30年3月に提出された衆議院情報監視審査会の平成29年年次報告書では、特定秘密文書の廃棄問題が中心的に取り上げられました。
その結果、平成28年中に廃棄された保存期間1年未満の特定秘密文書は、約44万5千件に及ぶことが明らかになっています。これは平成28年末時点の特定秘密文書件数約32万6千件を大きく上回るものです。
運用基準上、保存期間1年未満の特定秘密文書の廃棄に関しては、独立公文書管理監の検証・監察の対象外とされています。このため、これらの文書が何らチェックされずに各行政機関の判断で廃棄されている現状に関しては問題視せざるをえません。
確かに、これら廃棄文書の多くは、別途、1年以上の保存期間で正本・原本が管理されている文書の写し又は素材であるため、廃棄されたとしても、直ちに特定秘密の内容自体について事後的な検証が不可能になるわけではありません。
しかし、特定秘密指定が適切であったかどうかを事後的に検証するには、単に特定秘密の内容のみならず、特定秘密情報がどのように形成され、それを誰が、どのような目的で、どのように利用していたのかを含めて確認することが必要です。特定秘密の内容を確認できる正本や原本が存在する場合であっても、特定秘密指定の意思形成の過程を明らかにするためには、その写しや素材、暗号関係も含めて保存期間を1年以上と定め、少なくとも独立公文書管理監の検証・監察の対象とする必要があります。そして、特定秘密指定がなされた文書は、保存期間満了後であっても、廃棄を認めるべきではありません。
よって、当会は、重ねて特定秘密保護法の廃止を求めるとともに、廃止までの間の措置として、1)特定秘密文書の保存期間を、写しや素材、暗号関係を含めて1年以上と定め、全ての特定秘密文書の保存期間に関して明確な基準を定めること、2)特定秘密文書は保存期間満了後も廃棄せず、原則として全てを国立公文書館等に移管しなければならない旨の規定を公文書管理法等に定めることを国に求めます。
以上
2018(平成30)年12月3日
鳥取県弁護士会
会長 駒 井 重 忠