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集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明

日本国憲法は、前文において、日本国民が、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」(恒久平和主義)し、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」(平和的生存権)することを掲げ、第9条において、戦争を放棄し、戦力の不保持及び交戦権を否定している。(戦争の放棄)。

これまで、政府は、憲法は憲法第9条の下で許容される自衛権の行使は、自国の防衛のため、すなわち国民の生命、財産を防衛するために必要最小限の範囲に限られるとし、集団的自衛権(自国が直接攻撃されていない場合であっても、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃に対して実力をもって阻止する権利)の行使は、憲法が許容する自衛権行使の範囲を超えるものであって許されないとする立場をとってきた。

しかし、自由民主党が政権与党の座に返り咲いた2012年(平成24年)12月以降、集団的自衛権の行使を容認する動きが急速に進んでいる。2013年(平成25年)1月には安倍晋三首相は「集団的自衛権行使の(憲法解釈)見直しは政権の大きな方針の一つ」と言及した。同年9月には「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が集団的自衛権についての審議を再開し、集団的自衛権の行使を全面容認する方向での提言を検討しているとのことである。そして、現在、政府は、集団的自衛権行使の法的根拠を設けるべく「国家安全保障基本法案」を来年春の国会提出に向けて準備を進めている。

集団的自衛権の行使が許されないとするのは確立した憲法解釈である。時の政府の政策によって集団的自衛権を容認することや下位規範たる法律で憲法上の概念である自衛権の範囲を改変することは、憲法が最高法規であって(第98条)、厳格な改正手続(第96条)を定め、国務大臣や国会議員が憲法尊重擁護義務(第99条)を負うことにより、国家権力を憲法の制約下に置こうとする立憲主義に真っ向から抵触するものである。そして、解釈や立法によって憲法の基本原理たる恒久平和主義、平和的生存権、及び戦争の放棄を形骸化させるものほかならない。

よって、当会は、立憲主義を堅持し、憲法の基本原理を固守するため、政府が解釈によって集団的自衛権を容認すること、及び、国家安全保障基本法案の国会提出に強く反対する。

 

2013年(平成25年)11月1日
鳥取県弁護士会
会長 杉 山 尊 生

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