1 2022年(令和4年)2月22日、大阪高等裁判所は、旧優生保護法を違憲と判断し、その上で、不法行為の時から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に請求を棄却した一審の判決を取り消し、不妊手術を強制された控訴人ら3名に対し、国に賠償を命じる判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。旧優生保護法の被害に関して各地で訴訟が提起されているが、一連の訴訟で旧優生保護法の違憲性と国の賠償責任をいずれも認め、被害者側が勝訴したのは初めてのことである。
2 本判決が、半世紀にわたり、「不良」(旧優生保護法1条)という非人道的かつ差別的な烙印を押されたともいうべき状況に置かれ、個人の尊厳を著しく損ねられてきた被害者らの惨状から目を逸らすことなく、人権擁護の最後の砦として、その救済のための論理を示したことを大いに称賛したい。本判決は、「正義・公平」の観点から、除斥期間の適用を制限する場合があることを認め、被害者らが、訴訟提起の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく困難な状況にあった場合には、その状態が解消されてから6か月を経過するまでの間は、除斥期間の適用が制限されるとして、被害者救済に大きく踏み込んだ。本判決により、被害者らはもちろん、支援をする多くの人たちに勇気と希望が与えられた。
3 国は、優生保護法を制定し、長年にわたり優生政策を推進することで、社会の隅々にまで優生思想を植え付けてきた。1996年(平成8年)には優生条項を削除したものの、その後も今に至るまで、責任を認めて被害者らに謝罪することはなく、優生思想を除去するための取り組みも怠り続けてきた。その結果、社会には今もなお、優生思想および障害者に対する偏見差別が根深く残っているのが現実である。優生保護法の問題はいまだ終わっておらず、被害は今も続いている。
4 被害者らの高齢化は進んでおり、一刻も早い全面的救済が必要である。国が上告を断念して速やかに本判決を確定させ、全国で係属している同種訴訟においても、本判決の判断を尊重しての早期解決を行い、長年にわたり苦しめられてきた被害者らに対し、被害に見合った賠償を行うことを求める。
以上
2022(令和4)年3月4日
鳥取県弁護士会
会長 佐 野 泰 弘