【連載】マメ知識 虎に翼のことば 6

第86話~第112話

「51 放火は重罪です」~「60 国際法学者である嘉納隆義教授の鑑定を求めます」

第86話~第112話

「51 放火は重罪です」~「60 国際法学者である嘉納隆義教授の鑑定を求めます」

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「51 放火は重罪です」

~物置への放火は「現住」建造物放火? それとも「非現住」?~

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「51 放火は重罪です」

~物置への放火は「現住」建造物放火? それとも「非現住」?~

連載プロジェクトチームの足立珠希です。
86話では、スマートボール場を営む被告人が物置に火をつけて近隣の家を巻き込み全焼させたとして、現住建造物等放火の罪で起訴されました。
「物置」から出火したとのことですが、「物置」がスマートボール場と別の建物であったとしても「現住」建造物等放火罪が成立するのでしょうか?
今回は、建造物等放火の罪について解説します。

まず、人がいる又は人が住んでいる建物への放火は、「現住」建造物等放火罪(刑法108条)、それ以外の建物への放火は、「非現住」建造物等放火罪(109条)が成立します。
昼間に人が出入りするスマートボール場は「現住」建造物、無人の物置は「非現住」建造物にあたります。
「現住」建造物等放火罪は、人の生命への危険が高いことから、殺人罪と同じ法定刑(死刑・無期・5年以上の懲役)です。「非現住」建造物等放火罪(109条1項)は、人の生命への危険が低いことから、2年以上の有期懲役となっており、さらに「非現住」の建物が自己所有の場合には、6月以上7年以下の懲役となっています(109条2項)。

ドラマのように、物置に放火してスマートボール場や近隣の家が全焼したという事案で、どの罪が成立するかは、被告人の内心によって変わります。12話(連載7)の解説で述べたように、犯罪の結果を認識し、その結果を認容する内心を「故意」といいますが、故意の犯罪の成立には「その犯罪」の故意が必要だからです。

物置だけを燃やす内心で火をつけたが、内心に反してスマートボール場も燃えてしまった場合には、「現住」建造物を燃やす故意がないので、「非現住」建造物放火罪が成立します。
これに対し、隣のスマートボール場も燃やすつもりで物置に火をつけてスマートボール場も燃やした場合には、「現住」建造物等放火罪が成立します。物置が燃えただけで鎮火した場合には、「現住」建造物等放火罪の未遂罪が成立します。「非現住」建造物等放火罪の既遂罪ではないので注意が必要です。

それでは近隣を巻き込んで全焼させた点はどうでしょうか?
意外かもしれませんが、「現住」建造物等放火や他人所有の「非現住」建造物等放火の場合には、延焼罪は成立しません。
建物への延焼罪(111条1項)は、自己所有の「非現住」建造物や建造物以外の物を放火して近隣建物に燃え移った場合に成立します。

放火の罪は、放火対象や成立要件が入り組んでいて、司法試験の短答式試験にもよく出題され、受験生を悩ませます。
ドラマの被告人は放火の事実が認められず無罪となりましたが、放火の罪が成立する場合でもどの放火罪が成立するかよく検討する必要があります。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「52 私が中を完全に燃やしてしまったせいで心配をかけただろう」

~誤訳の発見は刑事弁護のカギ~

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「52 私が中を完全に燃やしてしまったせいで心配をかけただろう」

~誤訳の発見は刑事弁護のカギ~

連載プロジェクトチームの清水奈月です。
第88話では、放火事件の被告人として身体拘束されている顕洙が弟・広洙に送った手紙の日本語訳が問題となりました。
今回は、刑事裁判での外国語の翻訳をめぐる問題を解説します。

裁判所では日本語を用いることになっていますが(裁判所法74条)、母国語が日本語ではない方が裁判の当事者になったり、外国語で書かれた証拠が提出されることは普通にあることです。

外国人の事件の場合、弁護人は、就任当初から通訳人をお願いして、接見に同席していただきます。秘密が漏れないように、弁護側、捜査側、裁判担当の通訳人は、全員別にするのが理想ですが、やむを得ず兼任することもあります。

裁判では裁判官、弁護人、検察官がどんどん発言していくため、迅速かつ正確に翻訳が行われないと、被告人が置いてけぼりになり、裁判所の判断も危うくしかねません。弁護人としては、チェックインタープリター(裁判担当通訳人の翻訳の正確さをチェックしてもらう別の通訳人)の同席が一般的になるのが望ましいです。

検察官が用意した証拠は、事前に弁護人に開示されます(刑事訴訟法299条1項)。顕洙の手紙ならば、弁護人は弁護側通訳人などの協力を得て訳文をチェックし、被告人にも確認してもらいます。
訳文が不正確であれば、不同意意見を出して証拠採用に反対し(326条1項、320条1項)、また独自に訳文を作成して裁判所に証拠として提出します。

ドラマでは寅子が香子に手紙を見せて誤訳を発見しましたが、実際の裁判では裁判官が証拠を自宅に持ち帰って友人に見せるということはなく、適切な弁護活動によって誤訳が明らかにされるべきです。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「53 少年鑑別所」

~少年の身体拘束をめぐる2つの施設~

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「53 少年鑑別所」

~少年の身体拘束をめぐる2つの施設~

連載プロジェクトチームの渡邉大智です。
虎に翼第92話では、「女子高生が男たちに売春を持ちかけ財布から金を盗む事件」について、女子高生が少年鑑別所に入所しているという話がありました。
今回は、少年鑑別所と、これとは似て非なる少年院について、解説します。
 
まず、これらは、少年を収容して、身体拘束するという点では共通しますが、少年鑑別所は少年審判が行なわれる前に収容される一方、少年院は少年審判の結果、送致されることから、これらはタイミングの点で異なります。

少年鑑別所に収容する目的は、少年の鑑別及び観護処遇のためとされています(少年鑑別所法1条)。
ここでいう「鑑別」とは、医学や心理学などの専門的知識によって、少年の資質や環境上の問題を明らかにすることです。少年審判に先立って、少年がやり直すための方針を見出すことを目指します。
同時に、少年の更生のための働きかけも行われます(観護処遇)。

これに対し、少年院は、審判で非行があったと認められることが、収容の前提となります。
やり直しを目指すために、社会生活の中ではなく、施設に収容することが必要と判断された場合に収容されます。
収容された少年は、少年院で、社会人としての生活態度の習得を目指す「生活指導」のほか、職業技能を身につけるための「職業指導」、基礎学力の向上を目指す「教科指導」などを通して、自らの問題を見つめ、改善して社会に戻っていきます。

少年鑑別所と少年院は、言葉の上では似ているように見えますが、その時期や意味、目的には大きな違いがあります。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「54 日本政府に賠償を求めています」

~違法な行為を行った公務員が責任を負わない理由とは?~

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「54 日本政府に賠償を求めています」

~違法な行為を行った公務員が責任を負わない理由とは?~

連載プロジェクトチームの古田昌己です。
虎に翼第98話より、寅子は東京地裁の判事として「原爆裁判」を担当することになりました。この原爆裁判は、国家賠償制度(国家賠償法1条)を根拠に起こされたものと思われます。
今回は国家賠償制度における公務員の責任について、解説します(なお、原爆投下はアメリカ合衆国の軍隊の行為であり、その行為についてなぜ日本国政府が訴訟の被告になるのかは難しい問題であり、本解説の対象とはしていません。)。

国家賠償は、国や公共団体(行政主体)の違法な活動によって私人が被った損害に対してなされる損害賠償です。
この制度で注目すべき点は、公務員が違法に公権力を行使したとき、それについて損害賠償責任を負うのは、公務員が所属する国や地方公共団体であり、公務員は責任を負いません。

その理由として、第1に、国家賠償の場合、損害額の合計が多額になることが考えられるところ、国や地方公共団体に請求できるのであれば確実に救済を受けることができる点で有利であるということが挙げられます。

第2に、公務員が何でも賠償責任を負うということになると、賠償のリスクをおそれて業務遂行に消極的になってしまい、やるべき公務ができなくなる事態になるのは望ましくないということが挙げられます。

このような理由から、国家賠償法1条の責任は、本来責任を負うべきは、違法な公権力行使をした公務員自身ですが、国や地方公共団体が代わって負う責任であると考えられています(代位責任説)。とはいえ公務員に故意又は重大な過失があったときは、国や地方公共団体が、その公務員に対してその返還を求めることができるとされています(求償権・1条2項)。

以上は、被害者に対する金銭的な賠償責任の問題です。この問題とは別に、違法な公権力を行使した公務員が、行政主体から懲戒処分を受けたり、その行為が刑罰法規に触れる場合は刑事処分の対象になることが考えられます。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「55 第1回準備手続の日」

~民事訴訟の準備手続・むかしと今~

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「55 第1回準備手続の日」

~民事訴訟の準備手続・むかしと今~

連載プロジェクトチームの足立珠希です。
虎に翼第20週は原爆裁判が始まり、第100話では「準備手続」が実施されました。
ドラマでは左陪席の漆間裁判官が担当していましたが、裁判が法廷以外の場所で始まったことに疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか。
今回は、準備手続について解説します。

民事裁判では、公開法廷において、裁判官の面前で、当事者が主張を述べたり証拠を提出したりします(「口頭弁論」といいます。)。

しかし、効率的に裁判を行うためには、裁判の初期の段階で争点や証拠の整理を行い、争点に絞って効率的に証人尋問等の証拠調べを行えるように審理計画を立てることが望ましいです。
旧民事訴訟法下では、この整理のための手続として「準備手続」がありました。三淵嘉子が担当した原爆裁判では、実に27回の準備手続期日が開かれています。

現行の民事訴訟法(平成8年成立)は、弁論準備手続(170条)、書面による準備手続(175条)及び準備的口頭弁論(164条)の3種の整理手続を用意しています。

このうち、もっともよく利用されるのは、従来の準備手続を引き継いだ弁論準備手続です。
法廷以外の準備室等で、通常非公開で行われます。合議体の場合には1名の裁判官が手続を行います(受命裁判官といいます。)。

必ずしも弁論準備手続を開かなくてもよいのですが、現在の地裁の民事事件は、よほど簡易な事件以外は弁論準備手続に付するのが一般的です。
弁論準備手続は電話会議やウェブ会議の方法で行うことができます。従前は当事者の一方の出頭が必要でしたが、令和4年改正により双方がウェブ会議で実施できるようになりました。

令和4年民訴法改正は期日進行のオンライン化を図っており、現実の出頭が必要だった口頭弁論もウェブ会議の方法で出頭できるようになりましたが、今後も、効率的な審理を行うための争点・証拠整理手続の重要性は変わらないと考えます。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「56 佐田寅子さんの夫のようなものを名乗ります」

~ 籍を入れる法律婚・入れない事実婚。最も大きな違いとは?~

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「56 佐田寅子さんの夫のようなものを名乗ります」

~ 籍を入れる法律婚・入れない事実婚。最も大きな違いとは?~

連載プロジェクトチームの足立珠希です。
虎に翼第104話では、航一は、改姓について悩む寅子に対し、婚姻関係を結ばずに「夫のようなもの」を名乗る提案をしました。
今回は、法律婚と内縁(事実婚)の主な違いについて解説します。

最初の大きな違いは戸籍と姓の変更です。
法律婚は、夫婦が婚姻届を出して新しい戸籍を作りますが、その際にどちらか一方の姓を選択する(民法750条)ので、一方が改姓することが必須です。
事実婚は戸籍には変更がありませんので夫婦とも姓の変更はありません。そのため、法律上の姓の変更を望まない人は事実婚を選択しています。
また、事実婚の場合、姻族関係(725条3号)は発生しません。

次に、子が生まれた場合、法律婚夫婦の場合には子は夫婦の戸籍に入り、夫婦が共同で親権を行使します。
事実婚の場合には、子は母の戸籍に入って母の姓を名乗り(790条2項)、母が親権を行使します。

父は認知をすることで子の法律上の父となり(779条)、父母の協議で父を親権者とすることができます(819条4項)。事実婚夫婦の場合、胎児認知をしておき、出生届に父の名を書く例も多いようです。

以前は、非嫡出子(婚外子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とされていましたが、憲法14条に反するという平成25年最高裁判決を受けて民法900条4号が改正され、現在は平等となっています。

婚姻期間中、税金関係は法律上の配偶者しか配偶者と扱わないので、事実婚ですと配偶者控除は受けられませんし、医療費合算もできません。
一方、社会保険関係では実態を重視するので、事実上の配偶者でも扶養に入れることができます。
また、事実婚には婚姻の意思や夫婦共同生活の実体があるので、法律婚同様に貞操義務があります。

離婚の場合はどうでしょうか。
法律婚の場合、離婚届を出して協議離婚しますが、合意できなければ調停や裁判をする必要があります。

事実婚の場合は、解消のための法的手続は不要ですが、ドラマのように遺言を交わしていた場合には遺言の書き換えを忘れずに行いましょう。
離婚時に問題となる財産分与や養育費は事実婚解消の場合でも請求できます。事実婚の年金分割は扶養されていた3号被保険者の期間分のみ可能です。

配偶者が亡くなった場合、遺族年金は事実婚の場合も受給できます。
一方、相続に関しては、法律婚と事実婚は大きく違います。この点は次の連載57回で詳しく解説します。

なお、個人的には、事実婚の最大のデメリットは、相続税の配偶者控除を受けられない(それどころか2割加算される)ことだと思います。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「57 星航一は佐田寅子と内縁関係にあり」

~法律婚と事実婚で結論が変わる相続と遺留分~

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「57 星航一は佐田寅子と内縁関係にあり」

~法律婚と事実婚で結論が変わる相続と遺留分~

連載プロジェクトチームの森永有紀です。
虎に翼第104話では、寅子と星航一とが、内縁関係にあることを宣言し、その証として遺言書を取り交わしました。
今回は、法律婚(戸籍上の結婚)と事実婚(籍を入れない結婚)で結論がわかれる相続と遺留分の問題について解説します。

法律婚の配偶者は常に相続人となる(民法890条)一方、籍が入っていない事実婚の配偶者は相続人になれません。
ドラマでは事実婚の寅子は航一の相続人にならないため、寅子に遺産を残すためには遺言を書く必要があります。

遺言でも変更できないのが、遺留分という制度です。
遺留分とは、遺産の中で、被相続人による自由な処分をすることが制限されている利益のことです。相続人の中に子や配偶者がいる場合には法定相続分の1/2が遺留分になります(1042条1項2号)。これを侵害された場合、遺言によって遺産を多く取得した者に対して遺留分侵害額請求ができます(1046条1項)。

航一の遺言を例に、朋一の遺留分を考えてみましょう。
航一は、寅子に遺産の1/3を、残りの2/3を朋一、のどか、優未に均等(2/9)に遺贈し又は相続させるという遺言を作成していました。

ここで、寅子と事実婚をした場合、航一の法定相続人は、子2人だけなので、朋一の遺留分は1/4(=法定相続分1/2×遺留分1/2)です。遺言での朋一の相続分は2/9で、遺留分よりも少なく、遺留分が侵害されています(寅子と優未に遺留分侵害額請求ができます。)。

他方、仮に寅子が航一と法律婚をしていた場合、寅子も相続人となり、法定相続分は、寅子、朋一、のどかが各1/3です(昭和30年当時)。そのため、朋一の遺留分は、1/6(=法定相続分1/3×遺留分1/2)となって事実婚の場合よりも少なく、「朋一の相続分は2/9」という航一の遺言の指定よりも少ないので、遺留分侵害にはなりません。

このように法律婚をするか事実婚をするかで、相続や遺留分の結論が変わります。このようなことを意識しながら、弁護士は、遺言を書く人にとって満足できる内容を目指しています。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「58 当時、認められていたのは、出産の前後6週間ずつの休業申請だけ」

~弁護士の出産・育児への支援の現状とは?~

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「58 当時、認められていたのは、出産の前後6週間ずつの休業申請だけ」

~弁護士の出産・育児への支援の現状とは?~

連載プロジェクトチームの豊島摩耶です。
虎に翼第108話では、寅子が秋山判事から妊娠の相談を受け、後輩たちを守るため「育児期間の勤務時間短縮」「育児のための長期休暇取得」といった提案書を上司の桂場に提出する場面がありました。
今回は、弁護士の出産や育児をめぐる支援の現状について解説します。

自営業者である弁護士は、出産手当金や育児休業給付金の支給が受けられないことが多いと思われますが(雇用保険等に加入している勤務弁護士等を除きます)、出産・育児休業中の弁護士会費の免除制度があります。(弁護士会費の金額は、弁護士会ごとに異なりますが、月額5万円を超える弁護士会もあります)

鳥取県弁護士会所属の弁護士の場合、日本弁護士連合会(日弁連)・中国地方弁護士会連合会(中弁連)・鳥取県弁護士会の会費負担がそれぞれあります。
例えば出産前から連続して休業する場合は、

①日弁連会費は出産月の前月から子どもが1歳に到達する月までは全額免除
②鳥取県弁護士会の会費は出産月の前月から出産月の翌々月までは全額免除、その後子どもが1歳に到達する月までは執務時間に応じて半額又は全額免除
③中弁連会費は、鳥取県弁護士会の会費が全額免除となる場合には全額免除

が認められます(双子など多児妊娠の場合は別途規定あり)。

都市部等では保育園の待機児童の問題があり、会社員などに支給される育児休業給付金については、平成29年10月より、保育所等における保育の実施が行われない場合は支給期間が2歳までと延長されています(もっとも、保育所等への入所申込みが必要的とされています)。

女性弁護士の割合は、現在においても全体の2割程度と、多いとは言えません。より多くの意欲ある女性が弁護士を目指すうえでは、出産だけでなく、育児に対するより手厚い支援が望ましいと思います。
個人的には、弁護士会費の免除制度も、将来、子どもが2歳になるまで免除可能とする制度になることを期待しています。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「59 原告代理人、その言葉は質問ですか?」

~尋問で守るべきルールと「異議あり!」の意味~

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「59 原告代理人、その言葉は質問ですか?」

~尋問で守るべきルールと「異議あり!」の意味~

連載プロジェクトチームの渡邉大智です。
虎に翼第112話では、原爆裁判において、国際法学者である嘉納教授に対し、原告代理人である山田よねが反対尋問を行う場面がありました。
そこで今回は、法廷で行われる尋問のルールについて解説します。

尋問は、事実を立証するために、「人」(証人や訴訟当事者など)という証拠から情報を得ようと質問をするものです。尋問を申請する目的は、自らに有利な事実を立証することにあります。

尋問は、通常、

①主尋問(申請をした側からの尋問)、
②反対尋問(申請をしていない側からの尋問)、
③再主尋問(申請をした側からの再度の尋問)、
④補充尋問(裁判所からの尋問)

の順序で行われます(民事訴訟法202条1項。刑事事件については、裁判所の尋問を最初に行なう旨の条文になっていますが(刑事訴訟法304条)、実際には民事訴訟と同様の順序で行われています。)。

尋問のルールとして、例えば、「侮辱的な尋問」、「すでにした尋問と重複する尋問」、「意見を求める尋問」、「その人が直接経験しなかった事実についての尋問」などが、原則的に制限されています。

汐見裁判長は、よねに「その言葉は質問ですか?」に問いましたが、「原告は今を生きる被爆者ですが」との発言が、意見を求めるものなど質問として不適切であることを指摘したものと思われます。

「『はい』か『いいえ』で回答できる」誘導尋問は、主尋問では禁止されています。主尋問は、尋問を受ける人に友好的な質問がされるのが通常であることから、「はい」だけで答えることができる質問ばかりが行われるおそれがあるからです(裁判官からみても、「はい」としか答えない尋問では、事実を把握することが困難でしょう。)。
他方、尋問を受ける人と敵対している立場から質問を行うことが通常である反対尋問では、誘導尋問は許されています。

ドラマやアニメなどでよく出てくる「異議あり!」という発言は、質問がルールに違反していることを指摘し、質問の撤回などを求めて行う異議です。
創作の世界では、「嘘をついている」とか「真実はそうじゃない」などの理由で異議を出しているかもしれませんが、実際の裁判でこのような異議が認められることはありません。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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「60 国際法学者である嘉納隆義教授の鑑定を求めます」

~裁判官にはわからない専門知識を補う鑑定~

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「60 国際法学者である嘉納隆義教授の鑑定を求めます」

~裁判官にはわからない専門知識を補う鑑定~

連載プロジェクトチームの足立珠希です。
虎に翼第112話では、原告被告双方が鑑定を申請し、鑑定人尋問が行われました。
今回は、民事訴訟法上の鑑定について解説します。

鑑定とは、専門性の高い分野について、特別の学識経験を有する第三者に対し意見を求める手続(民訴法212条1項)です。
裁判官は当事者である原告被告の主張立証を元に判断をしますが、専門性の高い分野は裁判官の知識が不足しており、その分野の専門家に意見を求めなければ適切な判断をすることが困難です。

具体例として、医療訴訟における鑑定(医師)、不動産評価額や適正な賃料額の鑑定(不動産鑑定士)、非上場株式の価格の鑑定(公認会計士や税理士)などです。
鑑定には、専門性、第三者性、中立性などの特徴があります。

鑑定の手続は、当事者からの鑑定の申し出があると裁判所が双方の意見を聞いて鑑定の採否を決定します。選任された鑑定人は法廷または書面で宣誓し、鑑定を実施して鑑定書を作成します。

必要があれば法廷で当事者や裁判所が鑑定人に質問することがあります。以前はドラマのように「鑑定人尋問」という手続でしたが、平成15年改正により、「鑑定人質問」(215条の2)に改められました。

鑑定では、適切な鑑定人を選ぶことが重要です。当事者が候補者を挙げることもあれば裁判所が探すこともありますが、適任者に鑑定を引き受けてもらうことは簡単ではありません。
そのため、医療事件については、各地の裁判所が地元の医師会とネットワークを構築するなどの協力体制を築いています。

原爆裁判では、新兵器である原爆投下の国際法上の違法性やサンフランシスコ平和条約で放棄した米国への損害賠償請求権の補償義務を国が負うかという点が争点となっていたので、日本を代表する国際法学者が鑑定人に選任されました。

ドラマの国側請求の鑑定人である嘉納教授は「原爆投下は違法と断定できない」と述べましたが、史実の国側申請の鑑定人である田畑茂二郎教授は、原爆投下は国際法上違法と鑑定しています。

(各会員の意見にわたるものについては、鳥取県弁護士会を代表するものではありません。)

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