お知らせ一覧

【会長声明】最低賃金の大幅な引上げ及び中小企業支援の充実を求める会長声明

 昨年、鳥取地方最低賃金審議会の審議に基づいて、2022年(令和4年)10月6日施行の鳥取県の地域別最低賃金は、時給854円と決定されました。前年から33円の上昇となっています。しかし、時給854円という水準では、1日8時間、週40時間働いたとしても、月収約14万8000円、年収約177万円程度にしかなりません。この賃金額では、依然として労働者やその家族が十分に生活できるだけの収入水準が確保されているとは言い難いと考えます。
 2022年の最低賃金は、最も高い東京都が時給1072円に対し、高知など10県の853円が最も低く、219円もの開きがありました。しかし、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、労働組合や研究者による調査によれば、都市部と地方の間でほとんど差がないことが明らかになっています。都市部以外の地域では、都市部に比べて住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限され、通勤その他の社会生活を営むために自動車の保有を余儀なくされることが背景にあります。
 そして、2022年度平均の消費者物価指数(総合指数)は前年度より3.2%上昇するなど、生計費が急激に増大しており、最低賃金を引き上げる必要性が増しています。最低賃金付近の低賃金労働を強いられている労働者の多くは、もともと十分な貯蓄ができていませんので、物価上昇に対応する賃金引き上げは、死活問題です。
 一方、最低賃金の引上げによって経営に大きな影響を受ける中小企業に対して、政府は、長期的継続的な支援策を強化すべきです。下請の中小企業は、原材料やエネルギーの価格高騰分に加えて人件費の上昇分を価格に転嫁するのは困難と指摘されていることから、価格転嫁を進めるルール作りが必要です。また、賃金引き上げを実施した中小企業について、社会保険料の減免や減税、補助金支給等の支援策を広く実施すべきです。
 上記を踏まえ、当会は、鳥取地方最低賃金審議会に対し、鳥取県の地域別最低賃金の大幅な引上げの答申を出すことを求めるとともに、政府に対して中小企業の支援の充実を求めます。

以上

2023年(令和5年)7月4日
鳥取県弁護士会
会長 房安 強

関連記事

コメントは利用できません。