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【会長声明】国籍を問わず調停委員,司法委員及び参与員の任命を求める会長声明

 全国の各家庭裁判所および地方裁判所は,調停委員,司法委員あるいは参与員(以下,「調停委員等」とします。)となるべき者として推薦した外国籍の弁護士に対して,日本国籍を有しないことのみを理由に,最高裁判所への任命上申を行わないなど,採用の拒否が続いています。
 鳥取県においては,外国籍の者について,調停委員等の任命において,目に見える形で問題になったことはありませんが,今後,多文化共生社会を目指すうえで,日本国籍を有しないことのみをもって,採用を拒否する対応は,改められるべきと考えます。

 そもそも,民事調停委員及び家事調停委員規則(最高裁判所規則)第1条は、日本国籍を有することを任命の要件としておらず、同規則第2条に定める欠格事由にも、外国籍は挙げられていません。この点は,司法委員および参与員についても同様です。さらに,過去には,日本国籍を有しない者が調停委員として任命された例もあります。
 民事調停制度あるいは家事調停制度は,民事紛争あるいは家事紛争を,当事者の互譲と合意に基づき解決する制度であり,調停委員の役割は,当事者の合意に基づく紛争解決を支援することにあります。調停委員の職務には強制力がなく,公権力を行使するものでも,国家意思の形成に関与するものでもない以上,外国籍調停委員を排除すべき理由はないというべきです。職務に強制力がない点は,司法委員および参与員も変わりありません。
 むしろ,外国籍調停委員等の存在は,文化的あるいは民族的な多様性を調停制度等の司法制度にもたらし,司法サービスの充実に寄与します。在留外国人の数は,全国的に急増し,鳥取県においても同様であるところ,外国人労働者の受け入れがさらに広がるであろうことを考慮すれば,外国人が関係する紛争は,増加することが予想されます。調停等の場面において,外国人の言い分に耳を傾け,時にその心情に働きかけて,合意による解決を目指すなど,気持ちや視点を共有しうる外国人調停委員等の知見は,日本の司法制度において大きな役割を果たすことが期待できます。

 上記の事情に加え,憲法第14条や,自由権規約第26条,人種差別撤廃条約第5条の平等権に照らせば,外国籍調停委員等を任命する門戸を広げ,司法における文化的あるいは民族的多様性を確保することが,多文化の共生を目指す日本社会が採るべきみちです。

 以上の理由から,鳥取県弁護士会は,最高裁判所に対し,法律及び規則の要件を充足する資質のある者については,国籍を問わず調停委員等に任命することを求めるとともに,全国の各家庭裁判所及び地方裁判所に対して,日本国籍を有しないことのみをもって最高裁判所への調停委員等の任命上申を行わない対応を取らないことを求めます。

以 上

2020(令和2)年2月27日
    鳥取県弁護士会  
会長  森  祥 平

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