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安全保障法制に関する法案に強く反対する会長声明

1 当会は、2013年(平成25年)11月1日の「集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明」及び2014年(平成26年)5月2日の「解釈改憲によって集団的自衛権行使を可能とする政府方針に改めて抗議する会長声明」等により集団的自衛権行使を容認する政府の動きに一貫して反対する意思を表明している。

ところが、政府は、2014年(平成26年)7月1日、集団的自衛権行使を容認する閣議決定をし、本年5月15日、同閣議決定を具体化する自衛隊法、周辺事態法、武力攻撃事態対処法等10の法律の改正案及び新規立法である国際平和支援法案(以下併せて「本法案」という。)を国会に提出した。

本法案は、日本国憲法(以下、「憲法」という。)における恒久平和主義及び憲法が立脚する立憲主義との関係で、大きな問題を孕んでいる。

2⑴ 本法案は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)においても武力行使ができるようにする、いわゆる集団的自衛権行使を容認する法案である。

集団的自衛権行使の容認は、憲法が定めている恒久平和主義、平和的生存権(前文)及び戦争の放棄(第9条)を蔑ろにするものであり、到底許容することができない。本年6月4日、憲法を専門とする有識者3人を招いて行われた衆院参考人質疑においても、与党推薦の参考人を含む全員が集団的自衛権行使の容認を柱とする本法案について憲法違反との認識を表明している。与党推薦の参考人からも指摘されていることから明らかなように、本法案の内容は憲法に違反する。

⑵ また、本法案で新たに自衛隊の海外派遣の恒久法として制定される国際平和支援法は、従来、国際連合決議などに基づいて他国軍隊が行っている軍事行動に対する支援を自衛隊が行う場合は、特別措置法としてその都度に国会審議を行なったうえで、特定の事態・地域に限定しかつ「後方地域」でのみ行ない得るとしていたものを、事態や地域による限定を撤廃し、「後方地域」に限らず支援活動を行うことを可能とするものである。

これは、従来の法制度以上に米軍その他の外国軍隊の武力行使との一体化に接近するものであり、憲法第9条が禁止する武力の行使そのものとなるおそれが極めて強いものである。

⑶ また、従来は、自衛隊がPKO等に従事している際の武器使用について、自己及びその管理下に入った者の生命・身体を守るためのみに認められていたが、本法案は、それに加えて、「駆け付け警護」や地域住民の防護等を行う「安全確保活動」を遂行するための武器使用を可能とするものである。

本法案によって許容される海外での自衛隊の活動内容は、活動時期・活動地域・活動内容及び武器使用に対する制約が従来より大幅に緩和されることになるが、これは、憲法の定める恒久平和主義に反し、違憲である。

3 以上のように、集団的自衛権の行使容認を柱とする本法案は、憲法の定める恒久平和主義等を蔑ろにするもので、憲法に反するものである。集団的自衛権を行使するのであれば、本来的に憲法改正手続きを経る必要がある。

そもそも憲法は、国家権力の濫用を防止し、国民の自由と権利を保障するために、国家権力の権限行使を制限するという立憲主義に基づいており、これを全うさせるため、国民主権を規定し(前文、第1条)、憲法改正について、その最終的決定権者を国民と定めている(第96条)のである。ところが、政府は、集団的自衛権の行使につき、憲法改正手続を経ることなく、閣議決定及びこれを具体化する立法措置により実現させようとしている。このような政府の姿勢は、憲法により国家権力の権限行使を制限するという立憲主義を正面から否定する憲法破壊行為であり、絶対に許容することはできない。

4 よって、当会は、立憲主義を堅持し、平和を希求する憲法の基本原理を固守するため、政府が提出した安全保障法制等の法案に対し強く反対する。

2015年(平成27年)6月10日
鳥取県弁護士会
会 長 足立 珠希

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