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【会長声明】ハンセン病をめぐる問題の全面解決に向けた救済を求める会長声明

 2019年6月28日,熊本地方裁判所において,元ハンセン病患者の家族ら561名が,国を被告として,損害賠償を求めて提起していた訴訟の判決が下されました。
 同判決は,違法な隔離政策で家族も差別され,生涯にわたって回復困難な被害を受けたとして,国に対し,原告541名への損害賠償を命ずるものでした。

 1953年に定められ,1996年に廃止された「らい予防法」は,都道府県知事の療養所への入所命令(6条2項)や,療養所からの外出制限(15条),所長による謹慎などの秩序維持の処分(16条2項)が定められるなど,ハンセン病患者の幸福追求権や身体の自由,法の下の平等をはじめとする最も基礎的といえる基本的人権を著しく侵害するものであったことは明らかです。
 また,隔離政策によって,患者の家族においても,就学や就労などにおける差別やそれに伴う社会生活の喪失,結婚差別などによる家族関係の形成の阻害などによって,その尊厳にかかわる重大な被害が生じたというべきです。
 熊本地方裁判所判決は,元患者の家族の被害実態に光をあて,救済を図るものであり,高く評価されるべきです。

 鳥取県においても,戦前の「無らい県運動」を現行憲法下においても継続し,隔離政策を支え,患者の社会復帰を阻んだ歴史があります。
 また,今後も何らかの疾患や障害をきっかけとした深刻な差別や人権侵害が発生するおそれはあるというべきであり,決して過去の問題とは言えません。

 当会は,国が,この判決を厳しく受け止め,控訴を断念するとともに,ハンセン病をめぐる問題の全面解決に向けて,元患者の家族も対象に含めた広範で充実した救済策を講じるよう求めます。

以 上

2019(令和元)年7月1日
鳥取県弁護士会
会長 森 祥 平

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