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【会長声明】死刑執行に関する会長声明

 2018年7月6日及び同月26日、地下鉄、松本両サリン事件などオウム真理教による一連の事件で殺人などの罪に問われ、死刑が確定した松本智津夫死刑囚ら合計13人の死刑囚の刑が東京拘置所などで執行されました。
 犯罪により奪われた命は二度と帰りません。犯罪により命を奪われた被害者の無念、今なお重い後遺症に苦しんでいる被害者の苦痛、そして、犯罪により大切な人を失った遺族らの悲しみと苦痛は想像を絶するものであり、遺族らが厳罰を望むのは当然の心情です。
 死刑の存廃は、個々人の価値観が色濃く反映する問題であり、遺族らの被害感情や、信賞必罰を旨とする国民感情にも十分に配慮しなければならない問題ですので、軽々に論ずることは許されません。当会の会員のなかにも死刑の存廃には賛否両論があります。
 しかしながら、他方で、死刑に内在する、避けがたい問題にも目を向けなければなりません。それは誤判とえん罪による死刑執行の危険です。日本では、1980年代に、4件の死刑事件についての再審無罪が確定しました。これらの事件は、誤判やえん罪の危険性が、具体的かつ現実的であることを認識させるものです。裁判は限られた証拠によって判断するものであり、常に誤判とえん罪の危険を含んでいます。誤判やえん罪によって奪われた命は二度と帰りません。
 死刑については、誤判やえん罪の問題に加え、制度自体の法理論的正当性や、犯罪抑止効果が証明できないといった問題も指摘されています。死刑に代わりうる代替刑によって、死刑廃止を容認する国民世論の形成が可能だという指摘もあります。
 2017年12月現在、142カ国が法律上又は事実上の死刑廃止国であり、うち106カ国が全ての犯罪について死刑を廃止しているとの報告があります。こうしたなかで、2020年にはオリンピック・パラリンピックの開催とともに、国連犯罪防止刑事司法会議が行われる予定です。多くの国家、国民の注目が日本に集まってきています。
 日本弁護士連合会は、2016年10月、福井市で開かれた第59回人権擁護大会において、賛否白熱した議論の末、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択しました。
 もとより、私達は、被害者や遺族らの被害感情に常に寄り添い、被害者や遺族らを社会全体として支援する必要があります。悲惨な犯罪被害を未然に防ぐため、原因を深く究明し、継続的に対策を講じなければなりません。そのうえで、当会は、国に対し、死刑に関する情報を国民に十分に公開するとともに、国民感情にも十分に配慮しながら、死刑に代わりうる代替刑を検討するよう求める次第です。
 以上のとおり、当会の常議員会の議を経て、会長声明を発します。

以上
2018(平成30)年8月1日
鳥取県弁護士会  
会長 駒 井 重 忠

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