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【会長声明】谷間世代に対する国の救済措置を求める会長声明

司法は、国の三権の一翼として国民の権利を守るとともに、憲法の番人として立法と行政を監視する役割を担っている。そして、裁判官、検察官及び弁護士は、法曹と称され、司法の担い手としての責務を負うものである。
国は、高い技術と倫理観を備えた法曹を国の責務として養成するため、日本国憲法の施行と同時に司法修習制度を発足させ、以来これを運営してきた。司法修習制度の下で、司法修習生は、その将来の進路にかかわらず、法曹三者すべての実務を現場で学び、その基礎的技術と職務倫理を習得しなければならない。
法曹養成の目的を達成するため、法は、司法修習生に対して兼職禁止の修習専念義務を課している(裁判所法第67条第2項)。そしてその一方で、国は、かつて司法修習生に給費を支給し、司法修習生が修習に専念するための生活基盤を保障していた。
ところが、この給費制度は、法曹人口の増大を目指して司法修習生の増員が図られると同時に、国の財政的負担等を理由に廃止が決定され、2011年11月以降に採用された司法修習生からは無給の修習専念義務が課せられることとなった。その結果、法曹を目指す者は大学や法科大学院の学費の負担に加え、修習中の生活費まで国から貸与を受けることとなり、その経済的負担が一因となって法科大学院の受験者、入学者、司法試験の受験者が経年的に減少する事態が生じた。質の高い法曹を維持するためには一定の法曹志願者数の維持が不可欠であるところ、近年の法曹志願者の減少には歯止めがかからず、司法の維持存続を図る上でも深刻な状況となっている。
こうした危機的状況を受け、国は2017年4月19日に裁判所法を改正し、司法修習生に対する修習給付金制度を創設した。これは法曹の人材確保の充実と強化の推進を図るために、国が司法修習生に対して基本給付金13万5000円を毎月支給し、必要に応じて住居給付金と移転給付金を支給するものである。
しかし、この制度に基づく修習給付金の支給は、昨年の裁判所法の改正後に採用された司法修習生に限られ、改正前に採用された司法修習生には支給がない。このため、2011年11月から2017年10月までの間に司法修習生として採用された者だけが無給の修習専念義務を課せられ、その多くの者が大学や法科大学院での奨学金に加えて、修習中の貸与金の返済という重い経済的負担を強いられる結果となっている。
無給の修習専念義務を課された司法修習世代は、以前の給費制と現在の給付制の狭間に置かれていることから、「谷間世代」と呼ばれている。谷間世代の人口は、弁護士だけでも約9700人、裁判官や検察官を含めた総数は約1万1000人であり、法曹人口の約4分の1を占める。谷間世代の約7割が上記貸与制を利用しており、一人あたりの平均貸与総額は約300万円である。
谷間世代もそれ以外の世代と同じ司法修習を受け、同様に法曹養成された者たちであり、多くが司法を担う有為な人材として多方面で活動している。谷間世代が支える法曹人口の増大によって、鳥取県内の弁護士数もかつての25名から65名に増加している。そもそも法曹人口の増大は、利用者であるすべての国民のために、司法制度を支える人的インフラの拡充を目指して行われてきたものであり、司法過疎の解消もまた司法制度改革の重要な目的の一つであった。すべての国民のために行われた司法制度改革であるにもかかわらず、これに伴う経済的負担に関しては国の財政的負担を理由に谷間世代に肩代わりさせるのは明らかに不合理であって、こうした不合理は速やかに是正されるべきである。
当会は、法曹人口を支える谷間世代の多くが抱く不平等感や経済的な負担感を重く受け止め、国による是正策が講じられない現状での次善の策として、当会の谷間世代に対し、当会の会費をもって給付金の支給を行うことを決定した。しかし、この措置は、谷間世代をいれた会員全員の会費をもって賄われるものであるから、会員間の経済的負担を平準化する会内の相互扶助でしかない。
本来、司法制度の最終的な受益者はその利用者である国民であり、法曹は司法を支える社会の人的インフラであるから、国には公費で法曹を養成する責務があり、谷間世代の経済的負担や世代間の不公平を是正する措置を早急に講ずべき責務がある。世代間に不公平が生ずることの問題は今般の裁判所法改正の国会審議でも指摘されており、是正策の必要性自体が国の公的な会議で否定されたわけではない。
よって、当会は、国に対し、現在の法曹人口の多くを支えている谷間世代の全員に対して修習給付金相当額を一律支給する等の是正措置を講じるよう粘り強く求めるとともに、当該是正措置がとられる前の暫定的な措置として、谷間世代に対する貸与金の返還を猶予する立法措置を強く求める次第である。

2018(平成30)年5月16日
鳥取県弁護士会
会長 駒 井 重 忠

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