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【会長声明】いわゆる共謀罪を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に抗議する会長声明

本年6月15日,いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下,「本法案」という。)が,参議院の法務委員会の裁決が省略されるという異例の手続きにより,参議院本会議で採決され,成立した。このこと自体,数の力による暴挙であり,立法府の劣化との批判を免れない。

これまで当会は,対象犯罪が277にも及び組織犯罪やテロ犯罪とは無縁の犯罪も含まれること,一般市民も捜査対象になりうること,日常的行為も準備行為とされるため処罰対象に歯止めがかかっていないこと,市民の社会生活に影響を及ぼす監視社会になることなどを理由に,一貫して本法案の制定に反対してきた。

国会のこれまでの審議を経てもなお,本法案がテロ犯罪以外に適用されることは明白であるうえ,一般市民が捜査の対象になることや捜査機関による権限濫用の懸念は払しょくされていない。さらに,本法案の危険性はもとより,そもそも本法案の内容や立法の必要性自体が,市民に理解されたとは言い難い。

確かに,世界各地でテロが頻発する状況の中,自由が一定程度制約されたとしても,犯罪のない安全な社会を求める声がある。しかし,本法案がこれらの声に応えることができるわけではない。何より,本法案の成立により,健全な民主主義社会が崩壊することが強く危惧される。なぜなら,健全な民主主義は,少数意見も含めた多様な意見が自由に表明され,議論されることにより担保されるが,例えば,時の政府の進める安全保障政策やエネルギー政策に反対する市民が,監視・捜査対象となることを懸念し,意見表明やその準備行為をすること自体を委縮または自制することになりかねないからである。本法案の審議経過により,かかる懸念はより強固なものとなった。
よって,当会は,本法案の成立に強く抗議するとともに,引き続き,成立した法律の廃止に向け取り組みを行っていく所存である。

2017年(平成29年)6月22日
鳥取県弁護士会
会長 岸 田 和 久

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