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「共謀罪」と趣旨が同じ「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正法案の国会への提出に強く反対する会長声明

政府は、過去に3回も廃案になった共謀罪と何ら趣旨が変わらないテロ等準備罪を今通常国会に提出する予定であると報道されている。

安倍首相は、テロ等準備罪について、本年1月23日の国会答弁において、「共謀罪と呼ぶのは間違い」と述べ、その創設に強い意欲を示しているが、報道されている法案では、共謀段階で犯罪成立という基本的枠組みが全く変わっていない以上、両者は基本的に同一のものである。

このテロ等準備罪については、以下のような問題点がある。

第1に、政府はテロ対策の必要のためにテロ等準備罪が必要と説明している。しかしながら、既に日本国内においては、充分にテロ対策はなされている。

すなわち、日本は、政府も認めるように、テロ防止関連諸条約13本を批准し、これに対応する立法が既になされている。また、国内法においては、爆発物取締罰則(陰謀罪)、化学兵器、サリン、航空機の強取、銃砲刀剣類所持等取締法など、未遂以前の共謀や予備の段階からの処罰が可能となっており、しかも、これらについて講学上の共謀共同正犯も認められる以上、テロ対策のために新たにテロ等準備罪を設ける必要はない。テロ等準備罪については、そもそも、その創設の必要性(立法事実)自体が明らかでない。

第2に、政府は、テロ等準備罪は、「組織的犯罪集団」(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が重大な犯罪又は国連越境犯罪防止条約が定める犯罪を実行することにあるもの)という要件を加えるので、処罰対象は限定されると説明している。

しかしながら、この「組織的犯罪集団」の要件には犯罪行為についての「常習性」や「反復継続性」の要件が課されておらず、また、「組織的犯罪集団」かどうかが問題となるのは、あくまで犯罪の共謀を行ったときである。したがって、もともと適法な活動を目的とする市民団体や労働組合等であっても、その構成員の一部がある時点で違法行為を共謀したとされた場合にはその時点でその団体等の全体が「組織的犯罪集団」になったものとして捜査対象にされてしまう危険性がある。「組織的犯罪集団」の概念、要件は全く不明確というよりほかなく、結局は、取り締まる側の恣意的な運用を禁じることができないのであって、「組織的犯罪集団」の要件は、何の限定にもなっていないのである。

なお、政府は、テロ等準備罪の対象となる犯罪を原案の676の罪から277に絞り込むとの見解を明らかにしている。しかし、政府は、従前、共謀罪を創設するべき根拠としていた「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を批准するため」には犯罪数を絞り込むことはできないと説明していた。現在の見解は過去の説明と矛盾する内容を平然と述べているものであって、政府の説明にはまったく信頼性がない。

第3に、政府は、テロ等準備罪は共謀罪と異なるもので、共謀段階ではなく、準備行為があってはじめて処罰されると説明している

しかし、政府の国会答弁は、準備行為が構成要件であるのか、あるいは処罰条件であるのかの説明が不明瞭であり、このことからしても、テロ等準備罪が共謀罪と全く異なるとの説明自体、とうてい信用できない。さらに「準備行為」の定義は、「資金または物品の手配、関係箇所の下見その他」と規定する方針とのことなのであり、この「その他」の文言が盛り込まれることで拡大解釈に歯止めがなくなり、準備行為の要件による範囲の限定は期待できない。

 

この間、政府は、テロ等準備罪について、「一般の方々がその対象になることはあり得ない」ことを強調しているが、その対象が既存のテロ組織などに限定されていない以上、一般市民が対象となることは明らかである。かつての治安維持法も、「社会運動が法案のため抑圧されることはない」として成立したにもかかわらず、その後、結果的に多くの者が処罰されるに至っている。

以上の次第で、当会は、創設の必要性すら十分に説明できない、また、拡大適用のおそれがあり、過去3回も廃案になった共謀罪と何ら変わらないテロ等準備罪の国会提出には、強く反対するものである。

2017年(平成29年)3月3日
鳥取県弁護士会
会長 大田原 俊輔

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