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南スーダンに派遣される自衛隊に新任務を付与する閣議決定等に抗議し、安保法制の廃止を求める会長声明

1 政府は、2016年(平成28年)11月15日、国連南スーダン派遣団(UNMISS)に国際連合平和維持活動(PKO)として派遣される自衛隊に対して、新たに「駆け付け警護」の任務を付与する閣議決定を行った。また、併せて国家安全保障会議において「宿営地の共同防護」の任務を付与することも確認している。

「駆け付け警護」とは、昨年3月29日に施行された安保法制のうち、改正PKO法に基づくもので、離れた場所で武装勢力に襲撃された国連職員やNGO関係者などを助けに向かう任務である。また、「宿営地の共同防護」とは、同じく改正PKO法に基づくもので、自衛隊と他国のPKO部隊の共同宿営地が襲撃を受けた際に他国PKO部隊と共同して宿営地を防護するものである。いずれの任務もこれまでの武器使用基準が緩和され、他国のための武器使用が認められており、敵対勢力との戦闘行為から憲法第9条が禁止する「紛争解決のための武力の行使」に発展する危険性を孕むものである。

2 南スーダンでは昨年7月に首都ジュバにおいて大統領派と反政府勢力による武力衝突が発生し、PKO部隊と政府軍との間で一時交戦があったともされ、多数の市民に加え中国のPKO隊員も死亡し、国連施設も破壊された。そして、同年10月12日にUNMISSは「国内各地で暴力と武力衝突の報告が増加し、非常に懸念している」との声明を発表し、同年11月1日に発表された国連独立調査団報告書では2015年(平成27年)8月の停戦合意は上記7月の武力衝突によって崩壊したと述べられている。このような南スーダンの情勢からすれば、そもそも憲法に合致した活動であることを担保するPKO参加5原則の1つである「紛争当事者間での停戦合意の成立」を欠いているとの疑いが強いと言わざるを得ず、派遣している自衛隊を撤退させ、新たな派遣を見送ることを検討すべきところ、政府は自衛隊を南スーダンに派遣することを前提に、さらに危険な「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」の任務を付与した。

そして、上記国連独立調査団報告書によれば、政府軍兵士によってUNMISS要員のいるテラインキャンプにおいて殺人、脅迫、性暴力などが行われたことも報告されている。もし自衛隊員がこれらの場で「駆け付け警護」の任務に伴って武器を使用すれば政府軍との間で戦闘になることは明らかである。また、「宿営地の共同防護」についても「武力の行使」を行う他国のPKO隊員とともに共同して宿営地を防護しながら、自衛隊員のみが「武力の行使」ではなく、武器の使用にとどまることなど考え難い。

戦闘行為を行う相手方が政府軍・反政府勢力のいずれであっても、これらは「国家または国家に準ずる組織」といえ、自衛隊が憲法第9条が禁止する「紛争解決のための武力行使」を行うことになる。そして、自衛隊員が政府軍や反政府勢力の兵士を殺傷したり、自らも犠牲になることが現実化しかねない。

3 このように安保法制は憲法第9条に反する可能性が高いにもかかわらず憲法第96条の改正手続を経ることなく解釈変更を行った上で安全保障にかかわる立法を行うもので立憲主義に反すると言わざるを得ない。このような点から「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の任務自体そもそも容認できないものである。

これまで当会は安保法制が恒久平和主義、立憲主義に反するものであることを指摘し、その廃止を求めてきたが、今回の閣議決定等は恒久平和主義、立憲主義違反を具体化するものであり、到底許容できるものではない。

よって、当会は、南スーダンに派遣する自衛隊に対して、「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の任務を付与した閣議決定等の撤回及び自衛隊の即時撤退を求めるとともに安保法制の速やかな廃止を求めるものである。

 

2017年(平成29年)1月27日
鳥取県弁護士会
会長 大田原俊輔

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